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某声優さんとかナルサスとかその他ヲタ要素を呟いてます~~.。・:*:・゚`☆、。・:*:・゚`★*

ヘヴンリーデイズ ver.0 ~美しき世界~1

オンリーの際に出したペーパー小話を補完!
NSバンドパラレル「ヘブンリーデイズ」の番外編。
天才・波風ミナトとその被保護者カカシの話。
ペーパーの文を補完しつつ、付けたし+続編。
しかも終わらないっていうwwww


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彼は、不思議な人だった。

この地球上に溢れる音すべてが彼の音であり
例えば道端にお金が落ちた「チャリーン」という他愛もない音、その一つですら音楽に変えた。


ヘヴンリーデイズ ver.0 ~美しき世界~


「世界って不思議だね、音で出来てる。だから例えば、この100円玉ひとつで音楽という世界が作れるんだよ。ほら、こんな風にね。」
そう言って、目の前のこの人は100円玉をアスファルトに幾つも幾つも落としていた。
普通だったら傍から見たら変人と思われるが、この人は違う。

----------特別だった。

「それで、なんかいい曲が思いついたんですか、先生?」
「う~ん、そうだね。ちゃりん、ちゃりん♪」
謎の音を口ずさむこの人は、周囲から見たら何と思われるだろうか。
「自動販売機と小銭の歌なら今すぐ作る自信があるよ、ん!」
「そんな歌作ってどうするんですか!ドラマのタイアップですよ!」
そう言いながらも、即興で歌ったメロディはまさに神がかっていて、やはりこの人を特別視させるには十分だった。
はぁー、とため息を俺は、ついた。
この人の側にいて早1年・・未だによくわからない。

そもそも自分は好きでこの人にくっついてるわけじゃなかった。
父が亡くなり父の友人だった彼が自分の保護者を引き受けてくれた。
その変わりというわけではないが、今は被保護者兼付き人をしている。

この、波風ミナトという天才の一番近くに、自分はいるといっても過言ではない。
そう、この人は天才だった。歌を作れば、ヒットを出す、CMのタイアップ希望がわんさか来る。
歌を歌えば、ミリオンヒット、生出演の音楽番組は電話回線がパンクする・・それほどのカリスマだった。

「先生・・・締め切り明後日までですよ・・・」
「カカシ、焦りは禁物だよ。こんなに世界は音で溢れてるからね、焦らなくても音楽はちゃんと降りてくるよ。」
なぜだろう、この人が言うと説得力あるのは・・なにも言えずに黙ってしまう。
「たくさんのいい音に、そしていつか一生の音に巡り合えるといいね、カカシ。今も、未来も。」
時折、彼はこんな風に自分に対し格言のようなものをくれる。それは、不思議なことに自分に沁みわたるのが不思議だ。
「先生は、一生の音に出会えたんですか?」
「そんなに簡単に出会えちゃったら、面白くないだろう?」

笑った金色の髪が、風になびく。
その金色は、好きだった。
自分を照らしてくれる、光だった。
いつか、この光は輝きすぎて消えてしまうかもしれない、と漠然な「いつか」という不安が過る。

でもどうかこの瞬間だけは、紛れもなく真実。願わくば、どうか光を失わないように、そっと祈った。


-----------


「先生・・・どうでもいいですけど、これ早く拾ってください・・・」

落とした100円玉たちは未だ無造作にアスファルトに寝そべったまま放置されている。
そんな状況を見るに見かねて、100円玉を回収しつつ目の前の天才に進言した。
締め切り前は一分一秒だって惜しいのだ。
いくらこの人が天才だとしても、自分には自分の役割というものがある。
今はこのフラフラしている人を一刻も早く自宅にあるブースに押し込んで仕事をさせることが自分に課せられた使命なのだ。

「あーそうだね。100円玉さんが可哀想だよね。」
そんなことを軽はずみに言いながら、いそいそと拾い始めるこの人だがそれだけで終わるわけではない。
案の定、拾った小銭を再度また道端にばらまいて面倒事を繰り返している。
ある意味、これも天才のなせる技なのだろうか。
「あー転がっちゃったよー。大変大変。」
本当に大変だと思っているのかと疑うような彼の呟きが少しいらっとさせた。
当の本人は、転がる100円玉を必死に追った。
そして、拾おうとした瞬間。一瞬の刹那。
目の前の100円玉はいとも簡単に彼の視界から消えた。

一つの、とある靴先によって。

「あ、あれ・・・?」
どこか素っ頓狂な声を上げる彼と、その目の前の人物が自分の視界に入る。

流れるような赤い髪と
ただまっすぐな眼に一瞬、心を奪われて。

「あたしの方が先だってばね!」

その凛とした声は、もう夜になるという闇を払いのけるまるで光の剣。
案の定、その鋭さに心を奪われたのは自分だけじゃなかった。
何故かわからないが得意げに振舞う、目の前の彼女。

「え・・っと・・・?」
先だ、と勢いよく宣誓されたものの、目の前の先生はまったくもって何の事だかわからない顔をしている。

それもそはずだ。
だって自分も未だにこの状況を把握できていないからだ。
先生は、物事を把握なんてしない、起こったことをただ音として感じる。
この天才に、そんな把握能力なんてなくていい。

この人の持っている天賦の才に比べたら、そんなものはなんの価値も感じられない。
だから自分が把握し管理する。
この人にとって、これはどういうことなのかを。
今起きている事実が、のちにどういう結果を生み出すのかを。
把握して、模索して、考察する。それが自分の役目だ。

だから今この場で自分がすること、しなくちゃならないことはただ一つ。

「あなた、一体なんなんですか!」

仁王立ちの彼女と、先生の間の空気に割り込んで。

彼女が何なのか、を見極めること。


【続】

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